Adobe(ADBE)分析~事業モデルチェンジの成功で大化け株へ~

こんにちは。

今回はサブスクリプションモデルで成功を収めたAdobeについて分析します。

Adobeの事業構造と業界について

Adobeとは?

1982年創業の老舗の画像編集ソフトウエア企業です。

PDFでちょこちょこお世話になっているAdobeですが、マイクロソフトのOffice365のようにAdobeのソフトはデザインの世界で業務用に幅広く利用されているようで、今後も安定した収益を上げていくことが期待できます。

Adobeの特徴は、ほとんどのソフトウェアをサブスクリプションで提供している点です。

2019年度は売上高89%はサブスクリプションで構成されています。

Adobeの事業

事業は大きく分けて以下3つのセグメントで構成されています。

「デジタルメディア」Adobe Creative Cloudがフラッグシップ商品であり、PhotoshopやIllustrator、Premiere Pro、Lightroom、Adobe InDesignなどのアプリケーションを利用することができます。

ほかにはAdobe Document Cloudがあり、Adobeの原点であるAcrobatとPDFの電子文書作成・共有サービスがあります。

このAdobe Document Cloudの中で最も好調なのがAdobe Signで、契約書の送信・署名の取得・トラッキング・管理までのワークフローを完全にデジタル化し文書管理業務を効率化させる電子サインソリューションです。

Adobe SignはMicrosoftが推奨する電子署名ソリューションとして提携したことも追い風になり勢いを伸ばしています。

売上は72億ドルで、前年に比べて+約23%と上昇しました

「デジタルエクスペリエンス」:企業向けにウェブマーケティングテクノロジー(広告から商取引までを作成・管理・実行・測定・収益化・最適化するための製品、サービス、ソリューションなど)をひとつにまとめ、クラウド経由でマーケティング支援活動ソフトとして提供します。

ワンストップでアプローチできる点が強み。

売上は26億ドル、前年に比べて+約37と上昇です

「パブリッシング」:eラーニングソリューション・テクニカルドキュメントパブリッシング・Web会議・ドキュメント及びフォームプラットフォーム、Webアプリケーション開発、ハイエンド印刷など多様な市場機会に対応するレガシー製品およびサービスを提供。

パブリッシングという名前なので印刷関係かと思いきや、かなりなんでもやってる部門です。

売上は1.2億ドル、前年と比べるとほぼ変動なしとなっています。

Adobe Annual Report 2019より参照

Adobeのビジネス転換劇

2005年にライバルだったMacromedia社を買収してからはデザインソフトで独走状態だったAdobe。

PhotoshopやIllustratorなどさまざまなソフトウェアを扱い、グラフィックデザインや動画編集などのクリエイティブをトータルサポートする「Adobe Creative Suite」というパッケージを売り切り型のモデルで販売していました。

このAdobe Creative Suiteは世界中のクリエイターから圧倒的な支持を受け、2011年の売上高42億ドル・粗利率89.6%と脅威的な数字を叩き出していました。

それにもかかわらず、わざわざビジネスモデルを転換した理由は①顧客単価もしくは商品単価を高めることでしか収益を伸ばせなかったことと②約2年に1度のソフトウェア更新に対して顧客が物足りなさを感じていたことの2点だと言われています。

特に①に関しては、2008年のリーマン・ショック時に売り切り型のビジネスモデルだったAdobeの売上と株価が大きく下落した一方、定期収益型の企業の多くは企業価値も売上成長率も下がらなかったことを目の当たりにしたことが、ビジネスモデルの転換を促した一因と考えられます。

2011年にAdobeは大きく舵を切るべく、従来のソフトウェアをパッケージ販売モデルから定期収益型のサブスクリプションモデルに変更することを発表し、翌年サブスクリプション型のパッケージである「Adobe Creative Cloud」の販売を開始しました。

しかし、投資家たちから「なぜ好調なAdobe Creative Suiteを切り捨てるのか」「将来的に成長は見込めるのか」などの声が多く、この発表の翌日Adobeの株価は暴落しています。

たしかに売り切りのサービスからサブスクリプションに切り替えると、株価は一時的にマイナスに働く可能性があります。

従来は売った瞬間に収益になっていたものがサブスクリプションでは小分けになるので、転換直後は売り上げが下落し、大幅な投資が発生するためコストも高まります。

しかしある時点で収益がコストを上回り出すと、企業は安定した定期収入を得られるようになり、事業基盤が安定化します。

早い段階で売り切りのモデルのリスクに気づいたことや約34億ドルのドル箱を捨てても定額課金モデルに切り替えたことが、Adobeのビジネスモデル転換において大きな成功要因になったといえるでしょう。

Adobeの基本データ

Adobeの詳細

社名:     Adobe

ティッカー:  ADBE

市場:     NYSE

上場日:    1986/8/20

決算期:    11月末

時価総額:   169,192百万ドル

売上高:    11,171百万ドル

営業利益:   3,204百万ドル

純利益:              2,951百万ドル

PER:     58.54倍

PBR:     15.89倍

PSR:     15.10倍

※2020/1/28時点

Adobeの株価チャート

Trading Viewより

Adobeの株価をS&P500と比べました。かなり長い期間からのチャートではありますが、2012年にサブスクリプションモデルへ転換を果たしてからの株価の上昇はすごいですね。

2012年の転換後、株価は約13倍になってます…。恐るべし!

Adobeの財務データ

売上高・営業利益・純利益・営業利益率

2009年から売上高は4倍に差し迫る勢いで、2019年に至っては前年比+23.8%ほど成長しています。

営業利益率はサブスクリプションビジネスへの転換が完了した2015年頃以降から上昇し、2019年は30%台と優秀な成績を叩き出しています。

CF(キャッシュフロー)

営業CFマージン(営業CF/売上)も安定して推移していますね

2018年の大きな投資CFはMagentoとMarketoの2社買収によるものだと考えられます。

現在の時価総額は1,692億ドルなので、現金26億ドルと有利子負債41.4億ドルを考慮した企業価値(EV)は1707.4億ドル。

フリーキャッシュフロー40億ドルに対して42.6年分という評価を受けている計算となります。

EPS(1株あたりの利益)/ 発行株式数の推移 / ROE(自己資本比率)

積極的な自社株買いによりEPSが上昇していますね。

配当がない分、自社株買いで株主に還元している点がAdobeの特徴です。

2012年にサブスクリプションモデルへとビジネスモデルを転換させてからの数年間の過渡期は少し利益率が下がっていますが、2015年以降は収益が安定してきてグングンと上昇していっています。

※上記表には自己資本比率と記載していますが、正しくは「自己資本利益率」です。

Macrotrendsより参照

考察

今回はAdobeのビジネスモデル収益力を分析してみました。

Adobeは早い段階でサブスクリプションビジネスへと転換できたことが功を奏し、現在の株価となりました。

今後、デザイナーや動画編集者、カメラマンなどのクリエイター人口がさらに伸びていくと予想されるため、それに合わせてAdobeも成長していくでしょう。

Adobeのクラウドシフトが完了した今、次のステップとしてエクスペリエンス領域をはじめとするプラットフォーム構築を目指しており、「Magento」や「Marketo」の買収がそれを物語っています。

そして、その先にあるのがAI領域。

Adobe Senseiはクラウド上で提供する機械学習ソリューションの総称で、メディア領域では色彩補正、エクスペリエンス領域ではデータ解析などを行います。

これによりデザイナーやマーケターが行なう様々な作業の自動化を実現していきます。

また、他社との連携を図ったエコシステムも着々と拡大させ、クリエイターだけではなくエンジニアやデータサイエンティストにとっても重要な存在となりつつあります。

プラットフォーマーへと転身し、次なるステージへと向かっていくAdobeの動向には引き続き注目する必要がありますね。

現時点では、株価が非常に高いと感じるため、買いどころがこれまた難しい企業です。

調整局面がきたら真っ先に購入したい企業の一つに仲間入りとしました。

今回もお読みいただきありがとうございます。

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